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勝手に町の歴史を紹介!「群馬県渋川市」

2026年09月02日

カテゴリー:勝手に街の歴史を紹介

勝手に町の歴史を紹介!「群馬県渋川市」

伊香保温泉や「日本のへそ」で知られる群馬県渋川市には、古墳時代の遺跡から渋川氏、白井城、街道と宿場町、戦争の痕跡まで、幅広い歴史が残されています。本記事では、名物や祭り、アニメ・漫画とのつながりも交えながら、古代から現代へ続く渋川の歩みと、地域に眠る魅力を紹介します。

日本全国には、有名な観光地だけではなく、その土地を少し掘り下げてみるだけで面白い歴史が次々と出てくる町があります。
そこで歴史会では、私が実際に訪れた町を中心に、その町の名物や観光スポット、そして意外と知られていない歴史を「勝手に」紹介していきます。

今回ご紹介するのは、群馬県渋川市です。

渋川市というと伊香保温泉を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。しかし調べてみると、古墳時代の遺跡から、足利氏一門の渋川氏、戦国時代の白井城、江戸時代の宿場町まで、実に幅広い歴史が残っています。

さらに現在では『頭文字D』や『美男高校地球防衛部シリーズ』など、アニメ・漫画とのつながりもある町です。
今回は、そんな渋川市を勝手に紹介していきます!

群馬県渋川市へ行ってみよう!

渋川市は群馬県のほぼ中央部に位置しています。東京方面から鉄道で向かう場合は、高崎駅からJR上越線・吾妻線などを利用して渋川駅へ。車なら関越自動車道の渋川伊香保ICがあり、東京方面からも比較的アクセスしやすい場所です。

そして渋川の大きな特徴が、その地形です。
赤城山や榛名山などの美しい山々を望み、市内では利根川と吾妻川が合流します。
さらに渋川市は沖縄を除いた日本列島のほぼ中央付近に位置することから

「日本のまんなか」「日本のへそ」

を掲げている町の一つでもあります。

その「へそ」を町おこしにつなげたイベントが、毎年夏に開催される渋川「へそ祭り」
お腹に顔を描き、頭には笠をかぶって踊る「へそ踊り」はインパクト抜群です。

実際に現地で話を聞くと、かつて2日間開催されていた祭りが現在は1日開催となるなど、少子化や担い手不足という地域行事ならではの課題もあるそうです。これは渋川に限った話ではありません。

日本全国で長く続いてきた祭りや伝統行事を、これからどう次世代につないでいくのか。歴史を扱う私たちにとっても考えさせられるテーマです。

伊香保温泉だけじゃない!渋川の名物

渋川市を代表する観光地といえば、やはり伊香保温泉です。石段街で知られる温泉地で、その歴史は非常に古く「伊香保」という名前は『万葉集』にも登場します。

伊香保神社も古い歴史を持ち、現在は石段街の上に鎮座しています。温泉街を歩くだけでも楽しいのですが、歴史を知ってから訪れると、また違った見え方をする場所です。

食では水沢うどんが有名です。香川県の讃岐うどん、秋田県の稲庭うどんと並び「日本三大うどん」の一つとして紹介されることも多く、伊香保町水沢周辺には多くのうどん店が並んでいます。

さらに伊香保温泉の名物として知られるのが、茶色い皮の湯の花まんじゅう。こんにゃく製品も群馬らしい名物です。
そして少し意外なのが創作こけし。

渋川には創作こけしの文化があり、渋川駅前の名産品センター「しぶさん」でも、水沢うどん、温泉まんじゅう、こんにゃく製品などとともに創作こけしが販売されています。温泉、食、工芸品と、実は渋川には地域を発信できる素材がかなり揃っています。

また、渋川を語るうえで面白いのがアニメや漫画との関係です。群馬県を舞台にした作品として圧倒的な知名度を持つのが「頭文字D」。作品に登場する「秋名山」のモデルとして知られる榛名山があり、現在でも作品をきっかけに群馬を訪れるファンがいます。

さらにテレビアニメ「美男高校地球防衛部シリーズ」に登場する架空の都市も、渋川市がモチーフとなっています。
歴史好きだけではなく、アニメ・漫画ファンにも入口を作れるのは、渋川の面白いところです。

古墳時代の渋川がすごい!金井遺跡群と中筋遺跡

ここから歴史を見ていきましょう。まず驚いたのが、渋川は古墳時代がかなり強いということです。

代表的なのが金井遺跡群。
金井東裏遺跡では「甲を着た古墳人」と呼ばれる人物が発見され、大きな話題となりました。金井遺跡群から出土した甲や金属製品、ガラス玉、土器など計1801点は、2025年に国の重要文化財に指定されています。

なぜこれほど良好な状態で古代の痕跡が残ったのでしょうか。
大きく関係しているのが榛名山の噴火です。

同じく渋川市にある中筋遺跡では、6世紀初頭の榛名山二ツ岳の噴火によって火山灰が降り、その後の火砕流で埋没した古墳時代の集落が発見されています。竪穴住居だけでなく、平地式建物、畑、垣根、祭祀跡などまで残っており、古墳時代の人々がどのような集落で暮らしていたのかを知る貴重な遺跡です。現在は一部の建物などが復元され、史跡公園として公開されています。はるか昔から、この土地には人々の営みがあったのです。

「渋川」という名字はここから!渋川氏発祥の地

中世になると、いよいよ「渋川」の名前を持つ武士が登場します。
渋川氏です。

渋川氏は足利氏の一門で、上野国渋川荘を領有したことから渋川氏を称したとされます。つまり「渋川」という名字のルーツが、この群馬県渋川市周辺にあるわけです。そして近年、この渋川氏の人物が思わぬところから注目されるようになりました。

それが漫画・アニメの「逃げ上手の若君」です。逃げ上手の若君は、鎌倉幕府滅亡後の北条時行を主人公とした作品です。その中に登場するのが渋川義季
義季は足利尊氏方の武将で、鎌倉に置かれた関東廂番の一番筆頭を務めました。1335年、北条時行が起こした中先代の乱では、時行軍を迎え撃ちますが敗北。若くして命を落としています。

現在の人気漫画・アニメに登場する武将の名字が、実は「渋川市」につながっている。これは地域の歴史を知ってもらう入口として非常に面白いと思います。ところが実際に渋川を訪れた際、この話を地元の方にしてみると、意外なほど知られていませんでした。

もちろん南北朝時代という少し複雑な時代でもあります。しかし逆に考えれば、まだ地域資源として掘り起こされていない歴史が残っているということでもあります。

渋川から遠く九州へ!九州探題となった渋川氏

しかも渋川氏の歴史は群馬だけでは終わりません。
室町時代になると、渋川氏からは幕府の重要な役職である九州探題を務める人物が登場します。九州探題とは、室町幕府が九州を統治するために置いた重要な役職です。

群馬県渋川の地名を名字とした一族が、やがて遠く離れた九州の政治に関わっていく。地域史を調べていると、こうして一つの町から日本史全体へ話が広がっていく瞬間があります。これこそ「町の歴史」を調べる面白さではないでしょうか。

戦国時代の重要拠点・白井城

続いて戦国時代。
渋川市には白井城跡があります。白井城は白井長尾氏の本拠として知られる城です。長尾氏といえば上杉謙信を思い浮かべる方も多いでしょう。実際、この地域の歴史も山内上杉氏や長尾氏、武田氏、後北条氏など、関東・甲信越の戦国史と密接につながっています。

武田信玄が西上野へ勢力を拡大すると、この周辺もその影響を受け、真田幸隆らが白井城攻略に関わります。上杉謙信の死後に起こった御館の乱でも情勢が動き、やがて後北条氏の勢力下へ。そして1590年、豊臣秀吉による小田原征伐によって関東の戦国時代が大きく転換すると、白井城をめぐる状況も変わっていきました。

徳川家康の関東入国後には白井藩が成立し、江戸時代初期には城下町としての役割を担います。現在も白井城址を訪れることができ、近くには白井宿が残されています。

渋川市も白井城・白井宿を一体で紹介する観光パンフレットを作成しています。

白井宿に残る城下町の面影

白井宿を歩くと、現在の渋川とはまた違った町の姿を見ることができます。毎年春には白井宿八重ざくら祭りが開催され、武者行列や農産物・特産品を販売する六斎市などが行われています。

城跡だけを見るのではなく
「白井城を見て、白井宿を歩き、当時この地域がどのような場所だったのかを想像する」
という歴史散策ができるのも渋川の魅力でしょう。

江戸時代には二つの街道が交わる交通の要衝へ

そして渋川の歴史を考えるうえで重要なのが、交通です。
江戸時代の渋川は、高崎方面から金古を経由して北へ向かう三国街道と、本庄方面から総社を経由する佐渡奉行街道が合流する交通の要衝でした。
現在も高速道路や鉄道が通る渋川ですが、昔から「人が行き交う場所」だったのです。

町には上ノ町・中ノ町・下ノ町があり、問屋が置かれ、定期的に六斎市が開かれる市場町としても発展しました。
つまり渋川は単なる宿場ではなく

街道×物流×商業

によって成長した町でもあります。
また、市内には街道を通行する人や物資を取り締まった杢ヶ橋関所跡が残り、群馬県指定史跡となっています。

古代から人が暮らし、中世には武士が勢力を築き、近世には交通と商業で栄える。渋川の歴史を追っていくと、この土地が「人の集まる場所」であり続けたことが見えてきます。

迫力ある渋川山車まつり

そんな町の歴史や文化を現在に伝えているものの一つが、渋川山車まつりです。
豪華な山車が町を巡る光景は迫力があります。

現地で話を聞いたところ、現在は担い手不足などの問題もあり、祭りの維持にはさまざまな苦労があるとのことでした。急な坂道もある渋川で、大きな山車を動かすこと自体が大仕事です。

へそ祭りも山車まつりも、単に「観光イベント」として見るだけではなく、地域の人たちが受け継いできた文化そのものです。だからこそ、その歴史や意味まで一緒に発信していく必要があるのではないでしょうか。

戦争の傷跡が残る渋川商工会議所

今回、渋川を訪れて個人的に非常に印象に残った場所があります。それが現在の渋川商工会議所の建物です。
もともとは旧有限責任渋川信用組合の建物で、1931年・昭和6年に建てられた歴史ある建築物です。

そして、この建物にはもう一つ重要な歴史が残されています。先の大戦の際、米軍機による機銃掃射を受けた弾痕です。

約80年前、この町にも戦争があった。戦争というと東京大空襲や沖縄戦、広島・長崎などが語られることが多いですが、地方の町にも戦争の痕跡は残っています。

建物に刻まれた弾痕を実際に見ることで、「戦争があった」という教科書の一文が、突然、自分たちの暮らす町の歴史になります。こうしたものこそ、後世へ残し、伝えていく価値がある地域の歴史だと思います。

歴史会として渋川市を広めるなら

では、歴史会が渋川の歴史を広めるならどうするか。
私ならまず

「日本のへそ・渋川を、時代を超えて歩く町にする」

という軸を作ります。

渋川には古墳時代の金井遺跡群・中筋遺跡、中世の渋川氏、戦国時代の白井城、江戸時代の街道、近代の戦争遺構、そして現在の伊香保温泉や祭りまであります。
つまり一つの時代だけではなく、約1500年以上の歴史を一つの町でたどれることが最大の強みです。

例えば「渋川歴史タイムトラベル」として

古墳時代
金井遺跡群・中筋遺跡

鎌倉・南北朝時代
渋川氏・渋川義季

戦国時代
白井城・白井長尾氏

江戸時代
白井宿・三国街道・佐渡奉行街道

近代
旧渋川信用組合・戦争の弾痕

現代
伊香保温泉・へそ祭り・山車まつり

というストーリーを作れます。

さらに今なら「逃げ上手の若君」を入口にした渋川義季・渋川氏の発信はぜひやってみたいところです。
「アニメに出てくるあの武将の名字、実はこの町なんです」
これなら南北朝時代を知らない若い人にも興味を持ってもらえます。

『頭文字D』から榛名山へ、『逃げ上手の若君』から渋川氏へ。
ポップカルチャーから地域史へ入っていく導線を作るわけです。

そして、もう一つ取り組みたいのが祭りです。
へそ祭りや山車まつりを単に「今年も開催しました」と発信するのではなく、祭りを支える人々、準備、歴史、山車の特徴などを短編動画として残していく。
担い手が減っている今だからこそ、記録すること自体が文化継承になります。

学校教育とも連携できます。
「自分たちが暮らしている渋川には、どんな歴史があるのか」

子どもたちが調べ、地域のお年寄りから話を聞き、最後に動画や記事として発表する。
そうすれば歴史は「暗記するもの」ではなく、「自分たちの町の物語」になります。

そして最後は伊香保温泉です。
観光客が伊香保温泉だけを訪れて帰るのではなく、
「せっかく渋川に来たなら、町の歴史も一つ見て帰ろう」
という流れを作る。
温泉、食、歴史、城、遺跡、祭り。これらをバラバラに宣伝するのではなく、一つの「渋川の物語」としてつなげることが重要だと思います。

まだ知られていない歴史が町の魅力になる

古墳時代には榛名山の噴火によって埋もれた人々の暮らしがあり、中世には渋川氏が生まれ、戦国時代には白井城をめぐって武将たちが争い、江戸時代には街道が交わる商業の町として栄えました。
そして近代には、戦争の記憶まで建物に刻まれています。

その一方で現在は、伊香保温泉、水沢うどん、へそ祭り、山車まつり、創作こけし、そしてアニメ・漫画まである。
これだけ違う時代の素材が一つの町に揃っているのは面白いです。

有名な武将がいたかどうかだけが「町の歴史」ではありません。
その土地に暮らした人々が何を作り、何を守り、どんな道を人々が行き交い、何を次の世代へ残してきたのか。
それを掘り起こしていけば、どんな町にも必ず物語があります。

これからも歴史会では、日本全国の町に眠っている歴史を勝手に掘り起こし、勝手に紹介していきたいと思います。

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歴史会講師 井坂陽一

記事の執筆者:

歴史会講師 井坂陽一
歴史会主催 / 講師 
SISeI合同会社 代表

ベーシストとしてロサンゼルスに留学。その後、音楽専門学校講師やREC、LIVEなど音楽活動を続けるが、一転してSISel合同会社を設立。
企業のPVやMVを中心に動画を制作し、中長期的プロモーションの戦略を提案するクリエイティブコンサルタントも行う。
2021年に一般社団法人寺子屋経営塾を新たに立ち上げ「徳ある経営の実践」をテーマに代表理事として運営。歴史やDX、SNSなど、全国でセミナー講師としても活動中。

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